グループ体験学習の基本「みんな違って、みんないい」
今回は鯖戸善弘先生の著書「コミュニケーションと人間関係づくりのためのグループ体験学習ワーク」よりグループ体験学習の基本を理解する上で欠かすことのできない「人にはそれぞれ枠組みがある」という考えについて紹介しておきましょう。
もくじ(CONTENTS)
人にはそれぞれの枠組みがある
同じ状況におかれたとき、自分が思っているように、他の人も思っているのでしょうか。必ずしもそうとはいえません。そのため、イメージしたことの違いから思わぬ誤解を招くこともあります。またそれぞれのイメージしたことの多様性が発揮され、1+1=2以上の力になることもあるのです。
自分自身の今までの経験や認識してきた事柄(バックボーン)によって形成される枠組みのことを自己概念といいます。
- 私は日本人です
- 私は寿司が好きです
- 私は恥しがり屋です
一例をあげましたが、それらは全て自己概念といいます。
人はそれぞれ「十人十色」
人にはそれぞれの生い立ちがあり、顔や性格も異なります。「十人十色」ですから、新たな出会いに心ときめかすのです。お互いが補い合い、社会が成り立っていくのです。
人は自分の生い立ちのなかで確立した自分の価値判断で社会をみますが、かかわりをもった人をその枠組みで判断しがちになります。そうすると、「私はこう思うのに、どうしてあなたは理解してくれないの」と不満だけが残ります。
人にはそれぞれに枠組み(自己概念)があるということを受け入れることが大切です。それにより、他者を受容することができます。先入観をもたずに受け入れることができます。その気持ちがあると、自分の視野や世界観が広がります。他者のよさに気がつきます。そのことで良好な関係が促進されます。
とりわけ、国際理解を促進するために多文化共生を理解しようと思えば、国民性による価値観や文化等のスタイル(枠組み)の違いをお互いに尊重することが原点になります。
「みんな違って、みんないい…」
「みんな違って、みんないい」という言葉があります。大正から昭和にかけて活躍した童謡詩人・金子みすずの詩「わたしと小鳥とすずと」の中の最後の言葉です。それぞれの違いを尊び共存する喜びを歌い上げています。多様な生物が生きる自然も多様な人たちが共生する人間社会も同じです。であるなら、お互いの異なる枠組みを認め合い「みんな違って、みんないい」のスタンスを大切にしたいものです。
自己を受け入れ、他者を尊重しよう
「私は●●だ」という自己概念を明確にもつということは自己理解を深めることでもあります。つまり、自分と向き合うということです。自分のよい部分も悪い部分も含めて自分を受け入れることにつながっていきます。そのことを自己受容と言います。自分を受け入れるということは自分を認めることです。そのことにより自分は価値のある人だと思う自尊感情が高まります。それは自分の生きがいづくりや他者との良好な関係を作り上げていく上で大切なことです。
グループ体験学習のワークでお互いの枠組みが違うことを理解し、違うからこそ補完し合っているんだと気づけば、お互いに尊重できるのです。このことについて自分の腑に落ちることが、人間関係理解の第一歩だといえます。
まとめと感想
今回は「人にはそれぞれ枠組みがある」ということについて、簡単に紹介しました。いかがだったでしょうか?
私自身、人はそれぞれ十人十色ということは、頭では理解しているのですが、つい実際は自分の価値基準によって物事を判断し、その判断を人にも押し付けてしまったりすることがあります。本当に気をつけていかなければなりません。
特に、若い世代の人たちに昭和のおじさんの仕事観・価値観を押し付けたりするのは慎む必要があると感じています。
【もっと詳しく学びたい方へ】
体験学習についてもっと詳しく学びたい方は、以下の書籍を手に取ってみることをオススメします。
「コミュニケーションと人間関係作りのための体験学習ワーク」鯖戸善弘(著)金子書房
「プロセスエデュケーション 学びを支援するファシリテーションの理論と実際」津村俊充(著)金子書房