コンセンサスゲーム「船長の決断」解説編(模範解答あり)
今回はコンセンサスゲーム「船長の決断」の解答解説をやります!
まだゲーム未プレイの人は絶対に読まないでくださいね! 読んじゃったらゲームが面白くなくなりますよ!
今回の記事は、ゲームを主催する「講師」に向けた記事です。
もくじ(CONTENTS)
船長の決断のテーマは「危機管理」
「船長の決断」は「危機管理」を題材にしたコンセンサスゲームです。中でも「危機時の対応」がメインテーマです。
リスクマネジメント・クライシスマネジメント研修等のアイスブレイク・プログラムとして、取り入れるのも面白いでしょう。
ストーリーの概要
あなたは旅客船「サンシャイン号」の船長です。
大阪南港を出発し、土佐湾を過ぎ、まもなく日が暮れようとしています。
海は波がなく、穏やかに航海しています。
ところが濃霧が発生し、どんどん視界が悪化してきました。
レーダーに船の影が映ったとき…
すでに回避する適切な時機を逸し、衝突をしてしまいました。
あなたは、直ちに船長として適切な処置をとる必要があります。
課題は次の10項目の処置の中で…
重要で素早く処置すべきものから順に、1~10位までの順位をつけて下さい。
船長として素早く決断して下さい。
ストーリーの詳細は、上記YouTube動画を御覧ください。
グループ発表時の注意事項
各グループの発表時に、話合いや作業を続けるグループやメンバーがいた場合、すぐに注意してください!
「発表時は、発表者の話を聴くことが一番重要です!」
そうビシッと注意するのも、講師の役割のひとつです。
得点計算の方法
各グループの回答発表の後、講師(ファシリテーター)は、模範解答の発表の前に、同ゲームの得点計算方法を参加メンバーにしましょう。得点計算方法は、上図の通りです。
合計得点の低いチームが優勝になります。
船長の決断「模範解答」発表!
講師が模範解答を発表する際、1位から順に発表でも、10位から順に発表でもどちらでも構いません。その場の雰囲気で決めても大丈夫です。今回は1位から順に紹介します。
第1位「F:状況確認」
船長として、乗員の命を預かる以上、まず状況を把握することが大切です。状況を把握した上で、部下に指示を出すのが鉄則です。
第2位「H:水密戸」
危機の状況を把握した次に、やるべきことは「応急処置」。これ以上、被害が拡大しないことが大切です。
これ以上、浸水が進まないよう「水密戸(すいみつど)」を締めます。
第3位「G:非常通知」
「状況確認」「応急処置」の次に、乗客に対して「非常事態の通知」を行います。
第4位「B:救命艇」
第5位「J:SOS」
第4位「救命艇」と第5位「SOS」は、災害時の二次被害を防止するためのものです。
「船長の決断」の中で登場する10の選択肢の中で、1位~5位までの事項は「最重要事項」と言われています。
第6位「C:発電機」
第7位「I:相手救助」
第8位「E:医薬品」
第6~8位の「発電機」「相手救助」「医薬品」については、第1~5位までの「状況把握」「応急処置」「非常事態通知」「二次被害の防止」の次に行います。
第9位「D:つり道具」
第10位「A:音楽」
「釣り道具」「音楽」に関しては、ベテラン船長たちは特に不要なものとしています。
救命艇でのんびり釣りを楽しむ…食料確保のために釣りを行う…等の必要はありません。
大航海時代ならいざ知らず、テクノロジーの発達した現代においては、外洋の事故であったとしても、第1次救急隊は1日以内で到着するでしょう。
<参考資料>
船舶衝突事故時の緊急初期対応について、もう少し詳しく学びたい人に向けて、以下のサイトを紹介しておきます。
・日本船主責任相互保険組合 P&Iロスプリベンションガイド
・衝突事故の緊急初期対応(PDFファイル)
表彰後はコーヒーブレイク
講師・ファシリテーターによる模範解答発表後、各チーム得点計算を行い、優勝チームを表彰します。
私の経験からは、得点が10点未満なら「優勝の可能性あり」と言ったところです。
優勝チームの表彰後、最後に講師から簡単な講評を行います。
以上で、プログラムとしての「船長の決断」は終了です。
ゲーム終了後は、10分~15分程度の休憩を挟むのが良いでしょう。
次のプログラムに向けて、参加者に気持ちを切り替えてもらうためです。
「危機管理」とは…
階層別研修の一環として、「船長の決断」を行う場合でも、危機管理の概要について少しレクチャーするのがよいでしょう。
「危機管理(クライシスマネジメント)」とは?
大地震などの自然災害や、不測の事態に迅速・的確に対処できるよう、事前に準備しておく諸政策。
危機管理「6つのステップ」
危機管理は、「予防」「把握」「評価」「検討」「発動」「再評価」6つのステップから構成されています。
また、危機管理は発生前の準備が8割、発生後の対処が2割と言われています。惨事が起きてから場当たり的に対処していたのでは、8割失敗すると言われています。日頃からしっかり準備しておくことが大切です。
リスク管理と危機管理(狭義)の違い
危機管理は、危機発生前の予防から危機発生後の対処・事後処理までを対象としています。
ただし、発生から検討までの段階を「リスク管理」、発生後の対応のことを「危機管理(狭義)」と呼ぶ場合もあります。
コンセンサスゲーム「船長の決断」はこの狭義の部分での危機管理、中でも発生直後の対応部分を題材にしています。
まとめ…
日本に住む私たちは、地震や台風等の自然災害、米国と中国の対立等に端を発する国際政治的なリスク、少子高齢化に伴う社会的なリスク…等、様々なリスクに取り囲まれて生活をしています。
「防災・危機管理は国や自治体に任せておけばよい」そんな時代も過ぎました。
これからは、ひとりひとりが意識して、「危機管理」に取り組む時代になったと言えるでしょう。
「船長の決断」を単に合意形成のゲームとしてではなく、「危機管理」について考える教材として、活用してみるのも面白いかもしれません。