グループ体験学習の基本「グループのプロセスに注目する」

今回は鯖戸善弘先生の著書「コミュニケーションと人間関係づくりのためのグループ体験学習ワーク」よりグループ体験学習の基本を理解する上で欠かすことのできない「グループ内のプロセス」について紹介しておきましょう。

グループ・プロセスへの注目

グループ体験学習は、ワークを体験して、自分自身のこと、グループメンバーのこと、グループのことをふりかえり、それを自己成長の糧としていきます。

ワークのほとんどが、2人~数人のグループで行うものです。そこでは、メンバー間の感情の動きや、意思決定のされ方、リーダーシップのありようなどが起っています。そのようなグループの中で起こっている様々なことをグループ・プロセスといい、そこに注目します。主な注目点としては以下の様な部分があります。

①    リーダーシップ

リーダーシップには、課題を達成しようとする機能グループを維持しようとする機能があります。課題を達成するために、情報やアイデアを出し合い、目標や手順を定めたり、役割分担をしたりします。また、グループを維持するために、励ましたり支え合ったりして、お互いの良好な関係を作ろうとします。

それらのプロセスに注目します。つまり、誰がどのようなリーダーシップをとっているか、そしてどのような影響を与えているか、リーダーシップは固定化されているのか、得意とするところでメンバーがリーダーシップを分け合っているか等に注目します。

②    メンバーシップ

メンバーの一員として、グループにどのようにかかわっているかという視点です。それは発言の度数、言葉の調子や態度などから知ることができます。またメンバー同士の影響を与えあっているかにも注目します。

③    メンバーの感情

各メンバーの抱いている感情が、グループの目標達成にいろいろな影響を与えていることがしばしばあります。それらの感情は、通常、表にだされないことが多いだけに、メンバーの声の調子や表情など、ノンバーバルなコミュニケーションから読み取るようにすることが大切です。

④    コミュニケーション

コミュニケーションは、グループ・プロセスの中でも観察しやすいもののひとつです。誰が誰に話しているか、お互いに聴き合っているか(対応しあっているか)、お互いに受け入れているかなど、メンバー相互の関わり合いの仕方に注目します。

⑤    グループの意思決定

グループにおいて意思決定が、ひとりでなされているのか、少人数でなされているのか、多数決でなされたのか、合意を得ながらなされているのかなどに注目します、また意思決定されるときにメンバーがどのように関心を示しているのか、などに注目します、

⑥    目標

グループの目標がメンバーに理解されているのかどうか、目標が不明瞭になっていくことはないのか、目標の再確認はどうなされているのか、などに注目します。

⑦    時間管理

グループが作業するとき、時間管理の意識があるのかどうか、また誰が時間管理しているのかなどに注目します。

⑧    組織化

グループが作業するとき、目標達成に向けての手続きが決められているか、役割機能の分化がされているかどうかなどに注目します。またそれらはどのように確認され進められるのかに注目します。

⑨    規範

メンバーの行動を支配しているグループ内の取り決めや約束ごとを規範といいますが、メンバーに対して明らかにされているものと、暗黙のうちに了解し承認しているものがあります。それら規範の中でメンバーはどのように判断したり、動いたりしているのかに注目します。

⑩    雰囲気・風土

それぞれのグループが醸し出しているグループ特定の雰囲気や風土がどのように変化していっているのか、またそれがメンバーにどのように影響を与えているかに注目します。

まとめと感想

今回は「グループ・プロセスの注目点」について、簡単に紹介しました。いかがだったでしょうか?

私が講師・ファシリテーターとして、それぞれのグループを観察する時には、まず「組織化」の部分に注目するようにしています。その理由は、役割・機能の分担がされないかぎり、組織・グループとして成り立たず、グループワークそのものが進行していかないからです。

役割・機能分担がなされないグループワークはもはやグループワークとは呼べず、個人ワークとなるでしょう。

【もっと詳しく学びたい方へ】

体験学習についてもっと詳しく学びたい方は、以下の書籍を手に取ってみることをオススメします。

・「コミュニケーションと人間関係作りのための体験学習ワーク」鯖戸善弘(著)金子書房

・「プロセスエデュケーション 学びを支援するファシリテーションの理論と実際」津村俊充(著)金子書房

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